塗装用具の話 低圧温風機編
こんにちは。
今回は玄関ドアや雨戸、シャッターなどをスプレーにより塗装する為の道具を紹介したいと思います。
・スプレー塗装とは
スプレー塗装とは、圧縮した空気を用いて液体を霧状の状態で噴霧する塗装方法の事です。
この塗装方法は塗装効率が非常に良く、なおかつ塗膜を平滑に仕上げる事が出来るので、仕上がり性の面においても非常に優れた塗装方法です。
また、「強溶剤系」の塗料を塗装する際、刷毛やローラーではスプレー塗装の様な平滑な塗膜を得る事が出来ません。
その為、強溶剤系の塗料を美しく仕上げる為にスプレー塗装が用いられています。(車などもそうですね。)
塗料メーカーもスプレーしやすい様に分子量を下げ、強溶剤塗料を吹付け用として販売しています。
・日本ペイントの「スぺリオ」や関西ペイントの「PG80」等の商品がこの強溶剤系塗料の部類に入ります。
ただし、スプレー塗装はその塗装形態上、ミスト(塗料の粒)が飛散するのが一番大きな欠点です。
スプレー塗装というものは、コンプレッサーと呼ばれる機械で空気を圧縮し、その空気の勢いで塗料を霧状にして被塗面にぶつけます。
この時大量の空気と共に空中を舞う訳なので、飛散して当たり前といえば当たり前なんですが、住宅の玄関ドアなどの場合、仕上がり性と飛散の少なさ両方が求められます。
その時活躍してくれるのが低圧温風機と呼ばれる塗装機です。
こんな感じの機械です。(明治の低圧温風機です。)
このライトグリーンの部分が空気を送る機械で、普通の機械だとこの部分がコンプレッサーになります。
そしてホースからガンにつながり、塗料を霧状に変えるわけです。
本体だけだとこんな感じです。
そんなに大きくないんですよ。
凄く軽いですし。
さて、機械についてさっと説明しておきます。
この機械の特徴は低圧温風で
温風はさておき、「低圧」とは、普通のスプレー塗装(高圧スプレーガン)と比較出来ない程の低い空気の圧で、塗料を霧状に変える事が出来ます。
英語では「HVLP」と呼ばれています。
「H(High)V(Volume)L(Low)P(Pressure)」ハイボリューム・ロープレッシャーの略なんですが、簡単に言うと大量で低圧の空気という意味を持つ塗装機です。
通常の高圧スプレーガン、いわゆるカップガンの事ですが、この場合の塗着効率が35%程度なのに対し、「HVLP」の場合90%程度の塗着効率を得る事が出来ます。
この塗着効率の良さにより、従来より塗料の飛散を抑え、なおかつスプレー塗装の特徴である平滑な塗膜を得る事が出来ます。
ただし、圧が低い為にカップガンに比べると霧状になる粒子が大きく、カップガンより平滑になりづらいというデメリットもあります。(ローラーとは比較出来ませんが)
塗膜の美しさで言うと低圧温風機よりもカップガンに軍配が上がります。
固い話はさておき、その低圧温風機を自分も購入したので、うれしくなって専用の箱まで作ってしましたよ。
じゃんっ!
さらに
じゃんっ!
もう少し改良したいな。
ガンはこんな感じです。
低圧温風機も色々あり、精和の「クリーンボーイ」やWagnerの「COLT」、他にもABAC(旧チロン)等の各社メーカーがあります。
その中で僕が購入したのは明治の低圧温風機です。
その名も「光世光」。
・・・ひかるよひかる。
なんというネーミングセンス。
名前付けた人をちょっと恨みました。
だから僕は人にこの機械の事聞かれた時は「明治の低圧温風です。(ニコッ)」と未だに言っています。
ちょっと名前が恥ずかしいですから。
それはさておき、機械自体は精和のクリーンボーイと全く同じで、色だけが違います。OEMじゃないでしょうか。
エアーホースは多分水道ホースを流用したもので、この部分に関しては専用ホースがある精和のクリーンボーイの方が優れています。
ガンは精和ともWagnerともABACとも違い、明治のガンなんだと思います。
このガンは他のメーカーの物よりも僕の中では優れていて、タンクに空気を送り込む加圧ホースがないんです。
加圧部分はあるんですが、明治のガンは塗料の吸い込み口に加圧部分があるので、加圧ホースの劣化がなくメンテナンスしやすいです。
クリーンボーイやCOLTの加圧ホースは耐油ホースで加圧ホースを作っている為、ガンを使い終わった後シンナーで洗浄する時にシンナーの影響で劣化していきます。
毎回外せばいいのですが、使用回数が増えていくとカチカチになってきて外しにくくなってきます。
この真鍮の吸い込み口の辺りに加圧部分が隠れているんですよ。
ここに材料を詰めないようにキッチリ綺麗にしないとね。
さて、ここからは画像が多くなりますが、ガンの先を分解していきます。(明治のガンは凄く簡単な構造です。)
まずは最初の状態。
カッコいい。
綺麗にメンテしてあるからピカピカだし。
やる気が起きますね。
どんどん続きます。
左の画像の、この横の穴からエアーが出てパターンを変えます。
今の状態だったら横からエアーが出るから縦吹き状態ですね。
大分分解出来きました。
左の画像のこの真鍮の部品がチップ(材料の量を調節する部分)で、この部品を変える事でネタの量を変える事が出来ます。
また、この内径の大きさによって使える材料が変わったりします。
光触媒のトップコートは「1mmのチップで」とかいう具合に。
右の画像のとがった棒が、トリガーの部分と連動しており、トリガーを引くと棒も引っ込み、材料が出るという仕組みになっています。
Wagnerの「COLT」はこのトリガーの部分がプラスチックなんですよね。(少し残念)
精和の「クリーンボーイ」を知っている方が見れば分かると思いますが、分解性は「クリーンボーイ」が一番良いです。
「クリーンボーイ」は分解するとかなり奥まで掃除出来ます。
この機械はここまでしか分解できないので、最悪の事態が起こった時はガン自体、終了してしまいます。
そして後ろのこの部分。
この部分でトリガーの下がり幅を調節出来ます。
初めから緩くしてしまうと一気に材料が出てしまうので、最初は出ない状態にしておき、程良い加減を調節しながら自分の感覚でネタ量を決めていきます。
ネタ量が決まると、そこから塗装開始!
という訳です。
そういえば西条のドンキホーテのシャッターを吹付けている雄姿?(笑)を、手伝ってくれた職人さんが撮ってくれていました。
結構大きかったなぁ。
施工前・施工後
通用口
空除室
ここの風除室、大変だったなぁ・・・
通用口用のシャッターと風除室のシャッター2ヶ所(各所3回吹き)が養生から含め二人で一日でした。(シャッター部分のみ)
やはりローラーや刷毛と比べると施工が早く、綺麗に仕上がります。
話は変わって
最近、Wagnerの「COLT」がヤフオクに出品されていました。
出品者の画像です。
これがWagnerの低圧温風機なんですが
なんと
なんと
落札してしまいました(^-^)/
落札価格は35000円(送料込)です。
本田塗装、二台目の低圧温風機の誕生です。(笑)
必要あるかないかと聞かれたら「必要ない。」と僕は即答するでしょう。
でもそうじゃないんです。
ワグナーなんです。
「COLT」なんです。
「光世光」じゃないんです。
そう考えだしたら入札ボタン連打してました。
僕の知り合いの塗装店さんにその商品が出てるのを教えたら、COLT持ってるのに入札してきました。
結構本気で落とす気だったみたいです。
その人は降りた後も僕に「行け~!」とか「君の攻め続ける姿勢に根負けか?」とかいう実況メールを、自動延長中に実に14通もよこしてくれました。(ありがとうございました。)
おかげて情熱を絶やさず落札できました。ありがとうございましたm(__)m
最後はかなり変な記事になってしまいましたが
僕の周りはこんな陽気な塗装店さんが多いので、凄く楽しく仕事が出来ています。
という事にしておきます。
この機械、必要としている人に譲ってあげよう。
と心に決めた一日でした。
ありがとうございました。