遮熱塗料の話

遮熱塗料の話 

こんにちは。

今回は、最近注目を浴びてきている遮熱塗料について書いてみようと思います。

この遮熱塗料の話は趣味のページで書くべきか予備知識のページで書くべきか迷ったのですが、僕の趣味の部分が大きいと判断しましたので、うんちく話としてここで書く事にしました。

遮熱塗料の商品説明は製品紹介として別ページに書くつもりですので、遮熱塗料の製品に興味がある方はそちらのページをご覧下さい。


猛暑日という言葉が出来た程、近年急激な気温上昇が問題になってきています。

そして、この温度上昇に伴って、遮熱塗料と言われる塗料が脚光を浴びるようになってきました。

遮熱塗料とは名前の通り、太陽光による熱エネルギーを遮り、内部の温度上昇を抑える事を目的とした塗料です。

遮熱塗料をお家の屋根や外壁に塗装する事で、部屋の中の温度上昇を防ぎます。
この事で結果的にエアコンの消費電力を下げたり、快適な室内空間を生み出す事が出来ます。

外壁などの垂直部と屋根のなどの傾斜部を比較すると、屋根などの傾斜部が受ける太陽光の影響はおよそ2倍だと言われます。
このため、効率的に遮熱塗料の効果を発揮させるには、一番太陽光の影響を受けやすい屋根材に遮熱塗料を塗るのが効果的だと言われています。

屋根材~室内までの間には、熱が伝わりにくくする為に断熱材を用いたり、屋根裏に広い空間を作って部屋に太陽光による熱を伝わりにくくしています。
屋根材も熱を伝えやすい物、熱を伝えにくい物がありますので、屋根材の種類によっても内部への熱の伝わり方は違うでしょう。

しかし、一番外側である塗膜が熱エネルギーを遮ってくれると、結果的に屋根裏の空間の温度も下がります。
そうする事で部屋の中(特に二階)の温度が下がり、家全体の温度上昇も防ぐ事が出来ます。

また、「家全体を遮熱して温度上昇を抑えよう」という考え方から、現在では外壁用の遮熱塗料も販売されています。

「アサヒペ~ン(^-^)♪」のCMでもお馴染みになってるんじゃないしょうか。

遮熱塗料の概要を書くとこんな感じですかね。

これが現在、遮熱塗料が注目を浴びてきている理由とその効果です。

本題に入ります。

では、遮熱塗料はどの様にして遮熱効果を得ているのでしょうか。

・遮熱塗料における遮熱効果のメカニズム

一般的な遮熱塗料は、基本的に2つの作用で遮熱効果を得ています。

・一つが太陽光に対する作用(反射力など)で得る遮熱効果。
・もう一つが断熱力で得る遮熱効果です。

ひとえに遮熱塗料といっても、色々な作用の組み合わせにより遮熱効果を得ています。

カタログや製品説明には「遮熱塗料」としか書いていませんが
実際には色々な作用を組み合わせているので「遮熱・断熱塗料」と言っても良いかもしれません。

しかし、この塗料の最大の特徴は遮熱力で、現実にはほとんど遮熱力の効果で太陽光による温度上昇を防いでいると言っても過言ではなく。

塗料のカタログにも高い遮熱力がセールスポイントとして書かれていて

「遮熱力が高い=高性能の遮熱塗料」

と考えたんで良いんじゃないでしょうか。
塗料メーカーさんも「ウチのは遮熱力がありますよ。だから良い塗料ですよ。」と、そういう事を言ってますからね。


さて、この塗料の最大の特徴は遮熱力なんですが、まずは説明しやすい断熱力の事から書いてみる事にします。



・遮熱塗料の断熱効果とは

遮熱塗料には被塗物(塗った物)の温度上昇を抑制する為に、セラミックバルーンと呼ばれる遮熱顔料が用いられてます。
この顔料を遮熱塗料に使用する事で断熱効果が生まれ、これにより内部の温度上昇を防ぎます。

・断熱効果が得られる理由としては
この顔料は内部が中空になっているので、空気の対流が少なくなり、塗膜が熱伝導しにくくなります。
セラミックバルーンは塗料に混ぜられた断熱材って事ですね。

断熱材には、グラスウールやロックウール・セルロースファイバー・羊毛断熱材・ウレタンフォーム等、色々な種類がありますが、このセラミックバルーンも断熱する原理は同じです。

身近な物を例にあげると発砲スチロールも断熱力がありますよね。


しかし、そもそも断熱ってなんでしょうか。


少し脇道へ話を逸らします。



・断熱するとはどういう事でしょうか。

断熱をするには、熱伝導の低い素材を断熱材に用いて断熱するのが一般的です。
その熱伝導の低い素材っていうのが空気なんです。

空気は一見熱伝導率が高そうですが、空気(気体)は分子密度が低いため、実は木材よりも全然熱伝導が低いんです。
少し意外ですが空気って優秀な断熱材なんですね。

しかし、空気は熱伝導は低いんですが、対流による熱伝導が起きます。
その為空気を対流をさせない為に固体を使い、空気を固定しておかなくてはいけません。
しかし、逆に固体(空気を留めておく素材)は分子密度が高く、熱伝導率が高いんです。

痛し痒しですね。

現在利用されている断熱材には、分子密度の低いウール状繊維で、熱伝導率の低い空気を簡易に保持した繊維系断熱材(グラスウールなど)や、固体の中に気体の小泡を多く持つ発泡系断熱材(ウレタンフォームなど)等があります。
なるべく熱伝導の低い素材で、もっと熱伝導率が低い空気を囲い込み、断熱効果を得ようという考えです。

書き方が下手ですね。(^-^;)


ダウンコートって、真冬でも着るととても温かいですよね。
これもダウンが大量の空気の層を囲い込んでいて、空気を対流させないから温かいんですよ。
自分の体温を身の周りに纏う感じでしょうか。

白クマの体毛も同じ原理です。
あれも体毛の中が空洞になっていますからね。

ちゃんと分かりやすく書けているでしょうか。


・・・コホン。


それはそうと、塗料にダウンを練りこむ訳にもいかないので

遮熱塗料ではセラミックバルーンを用いる事により、この断熱の原理を利用しています。

しかし、ごくごく薄い塗膜にそこまでの断熱力は期待出来ないので、セラミクバルーンは温度上昇を防ぐ副要素の一つくらいに考えておくと良いんじゃないでしょうか。


遮熱塗料の断熱性能について書けたので、ここからは本題の遮熱力についてふれていきたいと思います。



・遮熱力のしくみ

遮熱塗料の遮熱性能は、どれだけ太陽光を吸収せずに反射出来るかで決まります。

遮熱塗料=高日射反射率塗料と呼ばれる程で、こういう所からも反射率の重要性が分かります。

光の話・色の話でも書きましたが、「太陽光を反射する」という事は必然的に反射率の大きい色を使用しないといけません。
反射率の大きい色というのはつまり白色の事で、塗膜が白色に近ければ反射率も上がります。

色味が付けば付くほど遮熱効果はなくなってしまうので「遮熱塗料の濃彩色より一般塗料の淡彩色の方が遮熱効果が高かった!」なんて自体も起こってしまいます。
これは濃い色ほど、太陽光のエネルギーを吸収しているからで、その分エネルギーを熱に変換してしまうからです。

ちなみに最近では遮熱塗料用の濃彩色カラーも用意されていて
専用の下塗り材の遮熱効果とセラミックバルーンの断熱効果で温度上昇を防ぐ事が出来ます。

・・・メーカー寄りの僕の発言良くないですね。


濃彩色でも一応遮熱塗料と言われる物もあります。

効果は・・・(笑)


ちなみに

濃彩色の遮熱塗料を塗り替えに使用しても、住人の方が実感できる効果はないだろうと僕は考えます。(各社塗料メーカーさんごめん!)

本当に部屋の温度を下げたければ、外壁も濃彩色を塗るより淡彩色を塗る方が対温度上昇の効果があります。
もっと言えば窓ガラスを高性能のペアガラスに替える方が、よっぽど断熱効果を実感できるんじゃないでしょうか。

塗料だけの性能で考えた場合、もっと良い塗料が沢山ありますから、外壁塗装をお考えの方は通常の塗料での塗り替えをオススメします。


さて

ここから少しはメーカーさんも擁護しときましょうかね。


色味を付けたい

でもなるべく遮熱効果持たせたい。


そういう考えから遮熱塗料は明度を下げる為(黒っぽっさを出す為)に、通常塗料に使用している黒顔料を使用せずに「赤色」「青色」「黄色」の顔料を使って明度を下げています。

それは黒顔料がとても赤外線と仲が良く、太陽光と反応してすぐに温度が上昇してしまうからです。
「減法混色」と言われる方法です。

「赤色」「青色」「黄色」の色味を混ぜるとそれぞれの色が反射・吸収し、光のエネルギーを減少させる事によって明度を下げる。
というやつですね。

流石塗料メーカー!!色彩のプロ!!あはは


詳しくはこちらに書いてありますので色彩の事に興味がある方はご覧ください。


それと、遮熱塗料には大体専用の下塗り材が用意されています。

専用下塗り材とは、赤外線領域の光の波長を効率的に反射する特殊顔料を使用する事で、上塗りを通り抜けた赤外線領域の光線を下塗りの特殊顔料で反射し、更なる遮熱効果を得ようという製品です。

この専用下塗り材を用いる事で大体5%~15%程の温度上昇を防ぐ効果があります。
この遮熱効果は色味によって様々ですが、カタログには「この色味は専用の下塗りを使用した場合、遮熱効果が何%ある」と事が書いてありますね。

遮熱塗料が発売されてすぐの頃は、専用下塗り材という物はどのメーカーでも見なかったと思ったんですが、最近はどの遮熱塗料にも専用下塗り材が用意されていますね。

技術が開発されてきているんでしょうか。OEMでしょうか。

謎。





では、遮熱塗料のメリット、はたまた遮熱塗料のデメリットはなんでしょうか。

分かる範囲で書いてみようと思います。


・遮熱塗料のメリット

遮熱塗料は正しい用途、また正しい色の選定を行う事で、夏場の消費電力を下げる効果が期待できます。
特に屋根に塗装する場合、その効果を多く得られる場合があります。
屋根材の種類によって遮熱効果が様々ですが、カラーベスト等の新生瓦やガルバリウム鋼板など、熱を伝えやすい屋根材に塗装した場合、比較的大きな効果を得る事が出来ます。

遮熱塗料は塗膜表面の温度とともに、被塗物(塗られた物)の温度上昇を抑える事が出来ます。
これにより、ガルバリウム鋼板などの金属の場合、金属の膨張・収縮が抑えられ、金属の劣化抑制につながります。
外壁材の場合も同じ事が言えて、熱による収縮や膨張が遮熱塗料で抑えられる事によって、外壁に使用されている部材自体の延命につながります。

また、旧塗膜が存在している塗り替え工事の場合、表面温度が低いほど膨れ等の発生を緩和出来ます。
現時点で膨れ等の塗装欠陥がある場合、応急処置的に遮熱塗料を施工する場合があります。


・遮熱塗料のデメリット

遮熱塗料は一般塗料より塗料の金額が高価になることから、そもそも工事金額自体が高くなります。

また、遮熱塗料は黒顔料の代わりに赤顔料・青顔料・黄顔料を使って色彩の明度を下げています。
その赤顔料・青顔料・黄顔料の耐候性の違いによって、どうしても黒顔料を使用した塗料より、経年による劣化具合が劣ります。
黒顔料は非常に安定してますからね。

遮熱塗料は塗料中にセラミックバルーンが入っているのですが、その分樹脂自体の量が減り、同じ塗料(遮熱かどうかの違いだけ)の場合、耐候性がやや劣ります。
耐候性の面から考えると遮熱塗料よりも普通の塗料が良いと言えます。



・遮熱塗料についてのまとめ

ガルバリウム鋼板やカラーベスト等の塗装には向いている塗料だと思います。
まして白に近い色で塗装した場合は消費電力に大きな違いが期待できます。
遮熱塗料によって減った電気代で施工費の差額を償却出来るかは疑問ですが、室内空間が快適になる事は間違いないと思われます。

ただし、濃彩色の場合あまり遮熱効果は期待できないので、色の選定を間違わない事と「施工と品質のバランス」が割高になってしまう事は頭においておいた方が良さそうです。

個人的には外壁塗装の場合、一般的な塗料で十分(むしろ良いんではないか)と思います。


んー


趣味として遮熱塗料を調べるのは面白いんですが、こうやって考えると、外壁にはあまり実用的ではない感じですねぇ。(求められると断れないのが僕ですが。)



最後は仕事の話なのか趣味の話なのか、分からなくなってしまいました。


そんな所で遮熱塗料の話は終わりにしようと思います。


ありがとうございました。

この記事を書いた人