NADの話
こんにちは。
今回は、書こう書こうと思いながら書いていなかった「NAD」についての話を書こうと思います。
ただ、この記事は一般の方が見てもあまり意味がないでしょうし、また同業者の方が見ても面白い内容かどうか分かりません。
興味のある方だけどうぞご覧下さい。(参考になるかどうかは分かりませんが)
そして、今回の記事も含め、全ての記事に当てはまる事ですが、僕の塗料に対する記事は塗料の基本的な事を書いているだけなので、知っている人が見れば当たり前の事ばかりです。
例の如く今回も基本的な話になりますが、自分なりには楽しく書いているので、一部の方が最後までお付き合いして頂けたら嬉しく思います。
それでは始めます。
塗料には色々な技術が用いられています。
その中で今回紹介するのは「NAD」の話です。
NADと聞いて皆さんの頭にぱっと思い浮かぶのは、例えば日本ペイントの「ケンエースG-2」や大日本塗料の「ビルデック」などの商品じゃないでしょうか。
これはNAD型塗料に分類される塗料です。
しかし、なぜ記事のタイトルを「NAD型塗料の話」ではなく「NADの話」にしたのかは、この記事を読み進めてもらうと分かってくると思います。
さて、まずはNADというものについての概要を書いてみます。
・NADとは
「NAD」とは省略化された名前で
正確には「Non Aqueous Dispersion」(ノン・アクア・ディスパージョン)と言います。
和名でNADは「非水分散形塗料」と呼ばれ、水性塗料が水溶液に樹脂や顔料が分散しているのに対し、NADは弱溶剤(ミネラルスピリット)に樹脂が分散している状態にあります。
要は「oil in oil」の塗料で、水性エマルション塗料の溶剤版とも言われます。
NAD型塗料に使われる希釈剤はミネラルスピリット(塗料用シンナー)で、強溶剤系に比べ、芳香族炭化水素であるキシレンの量が少ないのが特徴です。
強いシンナー成分を、弱いシンナー成分に置き換えた技術なんですね。
こうする事で臭気も少なくなり、強溶剤系の塗料に比べ、色々な面で扱いが容易になりました。
非水分散は1950年代から研究され、最近は塗料に幅広く応用されていますが、この技術により塗料に次の様な利点があります。
・弱溶剤なので旧塗膜への影響が少ない。
・臭気が強溶剤系塗料と比べ穏やか。
・粘性制御がしやすくハケ塗り作業性、ローラー作業性に優れている。
・付着性に優れている。
・ヤニ止め効果が大きい。 ※(日本ペイント参照)
などの特徴があげられます。
このNAD型塗料は、JIS K 5670で定義されていて、この規格(規格の中の決まりも規格で決めてるんですよ。)にクリアした塗料がNAD型塗料に分類されます。
先ほども書いた日本ペイントの「ケンエースG-2」や大日本塗料の「ビルデック」等がこの部類に入り、このNAD型塗料は各社塗料メーカーが出しています。
重要な塗料ですから。
ここまではNADの概要と、NAD型塗料について触れてきましたが、ここからはもう少し僕の好きな内容の話について書いていきたいと思います。(ここからが本題です。)
さて、このタイプの塗料で最大の特徴というか(名前の通りなんですが)そのものというか「NAD」という事についてなんですが
この技術の特徴は溶剤の中に樹脂を分散させているという所にあります。
溶剤で樹脂を溶かしているのではなく、分散させているという事です。
ん?
なにが言いたいのかって??
当たり前の事なんですが、NADは樹脂を分散(ディスパージョン)させています。
この技術により、今まで強溶剤でしか使えなかった樹脂が弱溶剤系の塗料として使えるようになりました。
しかし、NADの技術を使った塗料は何も「ケンエース」等のJISで規定されている塗料だけではありません。
現在販売されている主流の弱溶剤系の塗料(合成樹脂調合ペイント以外)も言わばすべてNAD塗料です。
ファインウレタンもアレスセラMレタンもワイドウレタンもシリコン樹脂塗料もetc・・・樹脂がシンナーに溶解しているのではなく、ディスパージョンさせています。
また、一液タイプの塗料も二液タイプの塗料も同じです。(ビックリですか?当たり前ですか?)
「塗料の中の話」では一液と二液の違いについて書きましたが、ここで少しだけおさらいしておきます。(ウレタン樹脂の辺りの話)
一液タイプの架橋硬化するタイプの塗料は、アクリル樹脂の中に、架橋反応する主剤と硬化剤がディスパージョンされた状態で入っていて、塗料が揮発重合する際に主剤と硬化剤のカプセルが接近(上手く接近すれば)し、架橋重合・硬化します。
一方二液タイプの架橋反応型塗料は、アクリル樹脂の中に架橋反応する主剤が入っており、それに硬化剤を加える事で、揮発重合する際に主剤と硬化剤が接近し、架橋重合・硬化します。
この硬化システムは水性塗料とよく似ています。
塗料の性能ですが、一液タイプの塗料も二液タイプの塗料もどちらもNADなので、性能が同じかというとそういう訳でもなく
常温で反応が進んでいく二液タイプの方が、架橋重合していると分かります。
だから僕は二液信者です。
さて、ここで少し強溶剤形塗料と、弱溶剤形塗料の違いについて書いておきます。
強溶剤系塗料は、樹脂がシンナー成分に「溶解」している状態の塗料です。
二液タイプの場合、主剤と硬化剤の割合を守る事で均一に主剤と硬化剤が混ざり合い、強固な塗膜を形成します。
ただし、強溶剤の塗料は樹脂が溶解している状態なので、そのままではとても扱いづらく、ある程度樹脂の分子量を下げ、作業性がしやすい様に製造されています。
・分子量を下げるというのはイメージ的には少し緩く(シャブくすると言った方がイメージしやすいでしょうか。)する感じですかね。
分子量が高いとその分扱いにくいですから。分子量と扱いやすさは反比例という事が分かります。
この様に、強溶剤系塗料は樹脂が溶剤に溶解している状態なので、主剤と硬化剤がキレイに混ざり合い、それによって塗料の性能がいかんなく発揮されます。
一方弱溶剤系塗料は、樹脂が溶剤に「分散」している状態で、この技術により今まで強溶剤でしか扱えなかった樹脂が、弱溶剤の塗料として使用出来るようになりました。
硬化方法ですが、弱溶剤塗料の二液タイプの塗料の場合、揮発する際に主剤と硬化剤のカプセルが接近し、架橋しあいながら重合・硬化します。
しかし、カプセル同士が接近した時に架橋重合するという事は、細かい目で見ると均一な塗膜は得られにくい訳で。。
どちらが性能がいいのかが気になって塗料メーカーに問い合わせた所、弱溶剤系塗料は強溶剤系塗料とは少し違う樹脂を使用しているとの事、しかも強溶剤系の塗料は分子量も下げていると来たもんだ。
なぬ。
「総合して弱溶剤系の塗料と強溶剤系の塗料の性能はどちらが勝っていますか?」という疑問をぶつけてみると「強溶剤系の塗料です。」とキッパリ返答を頂きました。
理由はやはり「弱溶剤系塗料では均一な塗膜が得られにくいから」という事でした。(回答ありがとうございました。)
やはり均一な塗膜が得られる分、強溶剤系の塗料の方が性能が優れているんですね。
ただし、施工しやすい(塗りやすい)のは圧倒的に弱溶剤系の塗料なので、それを考えると
玄関ドアや雨戸の様な、吹付け仕上げが出来る箇所は「強溶剤系」
雨樋や鉄部など、刷毛やローラーで仕上げる箇所は「弱溶剤系」
という事になりそうです。(何も変わりませんでしたが)
というかぶっちゃけウレタンやシリコンの配合量自体、僕たちが考えている程多くないですしね。
ウレタン塗料だー。シリコン塗料だー。といいますが、その割合はどうでしょうか・・・(笑)
こんな記事を書いていると他の事も書きたくなるので、今度ウレタン樹脂塗料・シリコン樹脂塗料・ふっ素樹脂塗料・無機塗料について書いてみようと思います。
塗料のグレードによる耐候性の違いはどの程度あるのか。また、ウレタン塗料やシリコン塗料は程度の物なのか(考察なりに頑張ってみます。)
そのことについて自分なりに書いてみました。
興味のある方はシリコン塗料の話へどうぞ!
興味のある方がいればいいんですが(汗)
これで今回の記事は終わりとします。
最後まで見て下さった方、ありがとうございました。