シリコン塗料の話
こんにちは!
梅雨時期は雨が多くて作業になりませんね(^-^;)
こういう時もありますが、自分の出来る事をやっていきましょう!
ではでは・・・
今回はシリコン塗料の話を書いてみようと思います。
また、最近流行りの「無機塗料」の事も書いていきたいと思います。
早速ですが
「シリコン塗料」と呼ばれるものには様々な商品があります。
また、「シリコン」という名前の呼び名さえ様々で
「シリコン」「シリコーン」「ケイ素」「Si」「セラミック」「無機」などと言われます。
シリコン塗料を大まかにカテゴリ分けすると
・一般的に塗り替えに使用される「汎用シリコン樹脂塗料」
・「スキン」と呼ばれる特殊な質感や美観を与える事の出来る塗料
・高価な塗り替えに使用される「高級シリコン樹脂塗料」(無機塗料)
・フッ素を上回る超高対候・超低汚染塗料と言われている「無機塗料」
・その他、磁器タイル用塗料や光触媒の上塗り等に用いられるシリコン樹脂塗料
と、分けることができます。
大まかにはこんなところでしょうか。
「スキン」はシリコン塗料のカテゴリ外かな?とも思うのですが、「セラミック系塗料」と明記されているの為、今回はシリコン塗料のカテゴリに加えています。
また、自分自身「無機塗料」がシリコン樹脂塗料だという事を知った時にはかなりの衝撃がありました。
さて、説明を進めていきましょうかね。
まずは一番馴染みのあるところから
・一般的に塗り替えに使用される「汎用シリコン樹脂塗料」
一般的に塗り替えに使用されるシリコン樹脂塗料は、汎用シリコン樹脂塗料の事を指すことが多く
商品名では
・日本ペイント「オーデフレッシュSi」「水性シリコンセラUV」
・エスケー化研「水性コンポシリコン」「水性セラミシリコン」「水性セラタイトSi」
・関西ペイント「コスモシリコン」「アレスアクアシリコンACⅡ」「アレスアクアセラシリコン」
・水谷ペイント「シエル」「ナノシリコンW」「ナノコンポジットW」
・菊水化学工業「水性ファインコートシリコン」「K’s水性シリコンエース」
・スズカファイン「水性エコシリコン」「水性シリコンユニ」
など、一般的な水性シリコン樹脂塗料を上げただけでもかなりの種類があります。
これでも水性塗料のみですから驚きです。
これに弱溶剤系の塗料も加えると大変な数になります。
こうやって書いてみるとシリコン塗料の商品が多すぎて逆に分かりづらい位ですね。
上記の塗料の中にも「一液」「二液」「艶消し」「三分艶」等
色々な特徴があり、その中で塗装店は塗料の選定を行います。
同じ塗料メーカーの中でも様々なシリコン樹脂塗料があるのは「価格」に違いがある為で
価格の違いにより、耐候性に違いがあると言われています。
また、性能面では「一液タイプ」の塗料よりも「二液タイプ」の塗料の方が高価な場合が多く、耐候性の面においても上回っている場合が多いです。
それは「二液タイプ」が「一液タイプ」の硬化メカニズムの違いにより、「二液タイプ」の塗料の方がより多くのシリコン樹脂を使用出来るからです。
少し塗料の紹介もしておきます。
水谷ペイントの「ナノコンポジットW」はシリコン樹脂塗料の中でも少し特殊で
独自の技術により艶消し(厳密には二~三分艶程)塗料にも関わらず、他のシリコン樹脂塗料と同程度の耐候性をもつ塗料です。
・そもそもなぜ艶消しだと対候性が落ちるのか!?
ちょっとご紹介します。
艶消し塗料というのは「正反射率」の低い塗料の事を指します。
・「反射率」=「正反射率」+「拡散反射率」
の事で、「正反射率」が高いほど光沢の高い(艶のある)塗料と言えます。
艶消し塗料は塗膜の表面に微細な凹凸がある状態の塗料の事で、その表面の凹凸で光が乱反射する事により「正反射率」が下がり、私たちの目には光沢がないと感じます。
逆に表面が平滑になればなるほど光沢が高くなります。
金属の「マット加工」も「ガラス彫刻」も表面に細かな砂を当て、表面に微細な凹凸を付ける加工をしています。
こういう点はは塗料と同じですね。
さて、
塗料という製品は艶がある状態が完成品として製造されています。
艶を落とすという事は、もともと艶がある状態の塗料に『艶消し剤』または『フラットベース』と言われる、塗膜の表面を凸凹にする体質顔料を加える事で可能にしています。
同じ塗料で艶調節を行った場合、本来入っている樹脂の量が『艶消し剤』分減る事になり、結果的に耐候性が落ちます。
同じ塗料で艶ありが「100%」の耐候性だとすると、三分艶で「80%」程の耐候性に落ちるという事を、スズカファインの方に言われた事があります。
この様に、塗料に体質顔料や添加剤を加え、塗料の性能を下げる事で実現していた艶消し塗料でしたが
水谷ペイントの「ナノコンポジットW」は独自のナノテクノロジーを使い、艶消しなのに高耐候性を実現しています。
この塗料は微細なナノコンポジットエマルション樹脂が表面に細かな凹凸を付け、光を拡散反射させます。
また、この塗料は元々艶消し指定の商品の為、艶調節は出来ません。あしからず
なんか僕は水谷ペイントのまわし者みたいですね!(違いますからね!キリッ)
まわし者ではありませんが、ナノコンポジットに興味のある方は商品ページへどうぞ!
ナノコンポジットW製品情報 ←別サイトへ移動します。(業者向け)
ナノコンポジットW特設ページ ←別サイトへ移動します。(一般向け)
さてさて、今回はシリコン塗料と言われる塗料の話を書いていきますので他の塗料もご紹介
次は「スキン」と呼ばれる特殊な質感や美観を与える事の出来る塗料です。
・スキンとは
スキンとは、無機系骨材とアクリル樹脂エマルションの結合剤を用いた塗料の事です。
この塗料は「砂壁状模様」「セラミック系多彩平滑上模様」「石目調」「多彩陶石砂壁調」などと様々な言われ方をします。
過去にはかなり人気のあった塗料だという認識がありますが、最近ではスキンではない「多彩色塗料」も数多く発売されている為、今ではあまり使われなくなってきました。
この塗料、「多彩陶石砂壁調」等という名前の通り、特殊な質感やテクスチャを与えてくれる塗料なのですが、どこがシリコン塗料なのでしょうか。
スキンで言う「シリコン」とは厳密には「セラミック」の事を指します。
この「セラミック」とは、陶石や天然石に様々な色味が付いている物質で、これが塗料に混ざる事で独特な色味や特殊なテクスチャを付ける事が出来ます。
また、「セラミック」とは広義には無機物を焼き固めた焼結体の事を指します。
なので色味を付けた無機系骨材が使われているスキンも「セラミック塗料」と言う訳です。
ここで勘違いしてはいけないのは、スキンという塗料に用いられている樹脂がシリコン樹脂ではないという事です。
その為、耐候性もシリコン樹脂塗料の様に優れているという事でもありません。(一部山本窯業の「グッセラ・Gスキン」等シリコン樹脂を用いたスキンも存在はします。)
さらにこの塗料は次回塗り替え時に、再びスキンで施工する事が基本とされます。
もちろん浸透性のシーラーで下地を固めて、通常の塗料も施工出来ますが、基本はスキンの上にはスキンでの施工が望まれます。
スキンは「セラミック塗料」というネーミングにより高級感を印象づけていますが、塗り替え性の面においても少しクセのある塗料なんですよね。
さて、どんどんいきましょう!
お次は
・光触媒の上塗り等に用いられるシリコン樹脂塗料
です。飛ばし気味に書きます。
この辺りの塗料、特に光触媒のトップコートクリアーは、光触媒反応に負けないようにする為にシリコン樹脂が使用されています。
「TOTOハイドロテクト」などの商品の場合、ブランドプライスもあるかもしれませんが、少量でも非常に高価な塗料です。
ただし、このトップコートは表面の非常に薄い薄い膜なので、最後にトップコートを施工したからと言って耐候性が上がる訳ではなく、あくまで光触媒の機能を付加させる為だけの物だと認識して下さい。
光触媒についての事は光触媒の話にまとめてありますので、興味のある方はそちらへどうぞ。
さてさて、いよいよ本題の
・高価な塗り替えに使用される「高級シリコン樹脂塗料」(無機塗料)
・フッ素を上回る超高対候・超低汚染塗料と言われている「無機塗料」
についてです。
塗料のグレードの序列として
アクリル塗料→ウレタン塗料→シリコン塗料→フッ素塗料→無機塗料
という並び順を目にした事はないでしょうか。
おやおや!?
気付いた方もおられますかね!?
無機塗料というのはシリコン樹脂塗料の事なので、本来ならばこの並び方はおかしい。
どういうことでしょうか。
塗料の樹脂による耐候性の違いは、ウレタンやシリコンなどの樹脂の配合量によって決まります。
その結合エネルギーの計算上の上限がウレタン樹脂よりもシリコン樹脂。シリコン樹脂よりもフッ素樹脂が優れているので
アクリル塗料→ウレタン塗料→シリコン塗料→フッ素塗料
という良く見る並びになる訳ですね。
しかし、この塗料の序列はあくまで「樹脂の」耐候性で決まるので、シリコン樹脂塗料よりも耐候性の良いウレタン樹脂塗料が存在するという事があります。
今回の場合、フッ素樹脂より耐候性の良いシリコン樹脂塗料が序列の右端にきます。
もちろん無機塗料がシリコン樹脂塗料という事に変わりないのですが、それでは別の塗料として区別出来ないので「無機塗料」という称号を得た訳です。
ウレタン樹脂・シリコン樹脂・フッ素樹脂とありますが、基本的に塗料の主成分の樹脂として使われているのはどの塗料もアクリル樹脂です。
そして、私たちが良く使用している汎用シリコン樹脂塗料は、シリコン樹脂の配合量が3%~5%だと言われています。
「そんな少量で塗料の性能があがるの!?」
と思われるでしょうが、シリコン樹脂塗料は硬化していく段階で塗料中に含まれるシリコン樹脂が表面に浮き上がり、表面に出てくるように作られています。
つまり塗膜の表面はシリコン樹脂が守っているので、耐候性がアクリル樹脂塗料と比べて優れているという訳です。
しかし、塗膜の表面がすべてシリコン樹脂というのは現実的ではなく、表面に共に並んだアクリル樹脂や顔料が紫外線によるダメージを受け、徐々に塗膜が「ちびて」いきます。
また、シリコン樹脂の層をを透過した紫外線も、内部のアクリル樹脂や顔料にダメージを与えていきますので、いずれは塗膜が劣化(光沢低下・チョーキング)していきます。
多くの方は
「最初からシリコンの量を増やしたらいいじゃないか!」
と思うでしょう。しかし、シリコン樹脂の含有量を増やすというのは技術的にはかなり難しいようで・・・
それが最近はフッ素樹脂塗料を上回る対候性・低汚染性という事で各社メーカー前面に売り出してきました。
なんででしょうか??(OEMの商品もかなり多いみたいですが・・・)
シリコン塗料には付き物の高耐候性ですが、これは促進耐候性試験で耐候性1種の塗料です。
耐候性1種・・・キセノンランプ法2500時間後の光沢保持率80%以上の塗料の事を指します。
理論上、キセノンランプ「500時間=一年相当」なので、外壁ならば5年程は光沢保持率80%以上を維持しますよって事です。
屋根の場合「1000時間=一年相当」なので、この試験ならば2年半位の光沢保持率ですね。
では「高級シリコン樹脂塗料」や「無機塗料」と言われる塗料はどうでしょうか。
この塗料、互いに呼び方は違いますが、実際にはどちらもシリコン樹脂塗料です。
「無機=シリコン」の事です。
(メーカーさん!フィルターかけ過ぎで分かりにくいです!きっとシリコン樹脂塗料じゃ売りにくいから「無機塗料」にしたんですよね!?)
高級シリコン樹脂塗料または無機塗料はそのシリコン含有量が「8%~30%」と言われています。
シリコン含有量が8%でもれっきとした高級シリコン樹脂塗料です。塗料価格もびっくりする程高価になります。
5%から8%にシリコン含有量を上げるだけで塗料メーカーさんはこれほど苦労するんですねぇ。。
それによって上がる耐候性はいかほどなんでしょうか・・・(^-^;)
でも実際に30%程のシリコン含有量の塗料もあるので、塗料の選定は各塗装店の目利きが試される所でもあります。
というかよくよく考えてみれば、現在はフッ素樹脂塗料よりシリコン樹脂塗料(無機塗料)の方が優れているんですね・・・って話ですよ。
「じゃあフッ素樹脂塗料は一体何なんだっ!」って僕たちは思う訳で。
こうやって記事を書いている僕もなんだか訳が分からなくなってしまいます。
・・・コホンッ!
さてさて
長々と書いてきました高級シリコン樹脂塗料や無機塗料ですが、この塗料も表面にシリコン樹脂が浮き上がってくるように作られています。
シリコン樹脂の含有量も汎用のシリコン樹脂塗料と比べると大分多いので、耐候性も段違いに上がります。
ちなみにスズカファインの「水性セラフレックスF」(無機+フッ素)は
グラフ上ではキセノンランプ4000時間で光沢保持率は90%台を維持しているように見えます。
スズカさんの高級シリコン樹脂塗料は、汎用シリコン樹脂塗料の倍ほどの光沢保持率ですね。
他のメーカーはどうでしょうか。
エスケー化研の「水性セラタイトF」は(無機+フッ素)
グラフ上ではキセノンランプ5000時間で光沢保持率は89%位でしょうか。
これもまた汎用シリコン樹脂塗料の倍ほどの光沢保持率を有しています。
菊水化学工業の「スーパー無機ガードZ」は
「メタルハライドランプ式」で1000時間で光沢保持率81%位ですかね。
この促進試験だと「35~50時間=一年相当」なので、仮に「50時間=一年相当」だと考えても20年程光沢率を保持するという計算になります。
本当だとしたらすごい塗料ですね。
それにしても「スーパー無機ガードZ」というネーミングは「マジンガーZ」でもお好きなのでしょうか??
・メタルハライドランプ
短時間で耐候性の促進試験が出来る促進試験機です。
キセノンランプが500時間一年相当と言われています。
そのキセノンランプと比べ約16倍程度の紫外線を照射出来るので、計算すると「31時間=一年相当」となりました。
あるカタログには「35~50時間=一年相当」と明記されているので、紫外線劣化のみに関しては計算間違いはなさそうです。
しかし、実際の塗料の劣化の原因は複合的な要因で起こる為、必ずしもこの「検査結果=現実」とは言えません。(キセノンランプに関しても同じ事が言えます。)
しかし、紫外線による劣化が耐候性に関して大きな要因になっている事は間違いなく、僕たち塗装店もこの検査結果&暴露実験の結果を信じて塗料を選定しています。
恒和化学工業の「ダイヤスーパーセラン」は
これまた「メタルハライドランプ式」の促進試験方法で・・・
ムムッ!
1000時間でもあまり光沢保持率の変化がありませんね。
間違いなく90%以上を維持しているように見えます。
ムムムッ!!
っとまぁ
少しはヒントになるかなと思います。。
さて、例のごとく最後はグダグダの展開になりましたが、皆さん楽しんで頂けたでしょうか!?
こういう記事は書きあげるのにかなりの時間を使います。
この記事でも何時間掛かったっか・・・泣
書くのは勿論楽しいのですが、コツコツとマイペースにアップしていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
それでは!
最後までお付き合い下さった方。
ありがとうございましたm(__)m